先日は,自分としては久しぶりの手術をした.
顔面痙攣の微小血管減圧術は,まれではないが多くもない.
ほんの3㎜程度の神経への血管の圧排を取れば,
一生,顔面痙攣が取れる可能性が
あるので,する価値が高い.
前回は全体の3%しかないようなまれな症例であり,
難渋した.勉強にはなったが,自分の知識と技術の限界も感じた.
今回は,あらかじめMRIとCTAの3D画像を検討.
一日中見ても,それでもわからない部分が何点かある.
教科書などは何回読んでも,実際の道具だて,ポジション,
モニターなど具体的なコツ,ポイントは
書いていない.
教科書,手術書を読んで,できるようになる手術はほとんどない.
術者にとっては常識の基本の基本なので,
知ってて当たり前のことしか書いていない.
そこで,自分は過去3年間の自院で行われた手術の
DVDを出してもらった.術者も異なるが,
手術記録も全部読み直して,ピップアップして15例の
手術DVDを全部見直した.
術者は違うが,全体の流れはほぼまったく同じ.
これは,選手は違っても武道もスポーツも動きは
ほぼ似ていることと同じ.
手順前後にならないようにすること.
剥離に使う道具のリスト.
使う道具の大小の違いなど,
15例分のDVDを見ると,前回では気が付かないところまで
気を付けるポイントが見えるようになった.
15人分のDVDをある時は8倍速,ある時は2倍速で見て,
全部を見てしまうのに,数日かかった.
自分の手術前日には,また見直してみた.
それでも,当日は,実際は開けてみて,脈絡叢と血管が癒着しているなど
他の15例のDVDでは,一切なかったこともあった.
それなりに対応して,手術は無事に終わった.
症状も改善.モニター上も改善.
自分の実力が付いたのではなく,通常のパターンだったから
うまくいったのであろう.
また次の機会は,いつになるか不明だが,
「普通の手」としては,よくできたと安堵している.
夏休み前に再手術などになれば,目もあてられないことに
なっていた気がする.
医師は,手術に満足のいく結果がでないと夏休みをとっても,
宴会をしても,まったく心が晴れない職業.
今のところは,夏休みが楽しみで良いような.