神の手,匠の手,普通の手, その4

多くの達人,名人と呼ばれる人は,共通点が多い.
そのひとつに,
その医師の名前のついた道具があること.

ようは,自分なりに,こうすればもっと早く安全にできるようにと
練習する際に,既存の道具では満足のいかないものがあったのであろう.

当たり前だが,スポーツでも,趣味でも,
最初は,その現場にいって,道具をレンタルして適当に遊ぶことから始める.

面白さを感じたり,学校ならクラブ活動にはいったりすれば,
ラケットも自分で買うし,シューズも買う.
ウェアも揃える.

日本の外科医で自分の道具を買う人は少ない.
というか,一つずつ値段が高いので,そろえることが,困難.
自分の道具を買って,練習するぐらいの性根のいれかたでないと,
おそらく,普通の手のレベルから脱する時間がものすごく長いと思う.

自分は吸引管の持ち方を割り箸で教えてもらった.
吸引管の穴を親指で押さえて吸引の強さをコントロールするが,
その時,吸引管の先が動くようでは,血腫除去の手術もできないと言われた.

専門医になった翌年,血管吻合用の道具を購入したが,練習したのは数回.
救急部門へ行ってしまい,どうしようもなかった.

まあ,自分の実力にあった,その程度のお話.

ありふれた技術しか持たない外科医は,影での努力も何もしていないということ.

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