どこの病院でも,院外用,院内用と小冊子を毎月出している.
自分が勤める病院も出しているが,
全国の病院が出している小冊子の中でも
コンテストのようなものがあり,最優秀賞を去年か
おととしか,もらったような.
毎月,その表紙は,
職員が何気に笑っていたりする人が一名,
残りがいくつかの院内の写真で
構成されている.
その次回の表紙に自分が出るらしく,
企画部の人が顔写真を
撮らせてくれと夕方に来た.
一回目は,朝の3時に脳出血で呼び出されて,
そのまま,仕事,9時から手術.
朝に飲む胃潰瘍の薬も飲めずに,続いて仕事.
なんとか脳ドックをすまして夕方16時.
脳ドックの説明室で撮影したが,
「顔がやつれている」とのことで,
写真を決める院内の
人たちからダメだし.
これがダメだし1回目.
その日は当直だったが,自分もつらかったし
顔は元気がなかったのはよくないとは思う.
2回目は,職員にIpadを配る前日で,
その画面にMRI画像を写るようにして,
死体置き場の手前のヒーリングルームの
緑のステンドグラスの前で,Ipad,自分,ステンドグラス
とルネサンスの絵画のように,
多くのメッセージを込めた,写真を撮ってもらった.
ステンドグラスからの光は後ろからで,
逆光で自分の顔が暗い.
暗示性に富んだ写真.
それは,
当院はIpadで画像が見える.
医師が診断する.
そして,ヒーリングルームに行く時が来る.
など深い意味を込めた写真にしたが,
「冊子の編集方針に,メッセージ性が合わない」
と2回目のダメだし.
翌日は,画像はださず,Ipadのリンゴのマークが
何気に写るようにして,バックは白い壁にした.
それが,バックが真っ白ではダメ
と3回目のダメだし.
その日は当直,
もう勘弁してほしい.
当直明けで,髪の毛もぼさぼさ,
そこへ,もう一回写真を撮らせてくれとのこと.
こんどは,もうIpadはやめて,
バックも,暖色系の絵画にして,
自分がなにげに写っている写真を撮った.
これが4回目.
それが,ダメならまた撮り直し.
もう締め切りは,目の前.
いままで,
こんなにダメ出しがでたことはなかったらしい.
カメラマンが悪いのか,考えすぎの自分がわるいのか
考えていたが,気がついた.
はじめから,こんな感じの写真を撮りたいと
要求してこない,
「ダメ出しを出す人たちが悪い」ような気がする
普通は,コンセプトがあって,
こんな構図の写真があって,
そこに,光の加減などで,
効果のある写真ができるもの.
なにも指示もださず,
こちらの疲れ具合も考慮せずに
忙しい中,仕事を中断させて何回も
写真を撮るのは,
モデル?に対して失礼な気もしてきた.
日常を切り取るのなら,
当直明けで心電図異常がでて,
胸が苦しいときのこちらの顔を
とれば,医師の実際の場面をとらえた
迫真の冊子の表紙にはなると思う.
しかし,その冊子のタイトルは
「愛」
なので,現実とはかけ離れている.
先月のものは,
別の科の先生が,事務の女性と
にこやかにほほ笑みあっている写真で,
「愛」というよりは,
「二人の愛」のほうが冊子のタイトルに
良いような,心温まる写真?
まあ,院内冊子,院外用冊子と
毎月,大変なことはよくわかった.
もう.あんたたちの
好きなようにしてください.