慢性硬膜下血腫:手術方法,術前術後管理の違い

これは途中 2017年4月15日追加
さらに2018年4月12日追加

 

慢性硬膜下血腫の手術は似たり寄ったり
そう思っていたし,実際,そうだったが.
微妙な違いの積み重ねが大きな違いになる.

新しい病院でのオペ方法と以前の病院での違いから、考えた。

2016年10月から新しい病院で働きだして,
自分にとっては,「驚きの違い」を新しい病院で経験したので,
一般的なことをまとめてみました.
まあ,大昔は開頭術で
硬膜を銀線で縫合していた時代もあったとか,
チタンプレートができるまでは鉄製ワイヤで頭蓋骨を固定したりは常識だった時代もあったし.

しかし学会,研究会,雑誌,SNS?で情報共有が
普通になっても,まだまだ残る病院ごとの個性.
例えは違うが,各地の秋祭りなどは同じようで
それぞれ違うという感じかしらん.

もう少し一般的に言えば
「自分の知っている常識は、大きな常識の中の一部」
と言うことであろう。

1)消毒の回数,術前,術後はどうする?
  これは、何回消毒するのがベストなのかと論文が出た.
  答えは「3回」
  以前, 大阪の大学に手術の見学に行った時,
  6回やっていた.
  どうも,今の理屈では,あまりに多数回消毒すると,
  皮下脂肪層がダメージを受けて防御層が破綻するとのこと.
  これは,若い人の寝たきりで褥瘡が出来ず,高齢者で出来るのは
  どうしてかなどと同じ理屈.消毒で表面の脂肪を取ってしまうと
  落下細菌,表面の細菌が入り込むということらしい. 
  
  それと,毛根の中には雑菌が入っているので,
  3時間もすれば,雑菌は出てくるらしい.
  別に「手術で新しい病原菌が入っていくのではなく,
  毛根から表面に出てくるということで,あまりに表皮を壊すほど
  消毒するのは良くないと言う見解.

  落としどころ: 術前の消毒は3回

2)手術が終了して,手術直後は消毒しますか?
  どの病院も術直後のガーゼを当てる前に消毒していた.
  新しい病院になって,口には出さないが,
  ある種の衝撃であった.自分にとってはでそのというか今の
  病院にとっては当たり前のことのような.
  要は,手術が終了して,消毒をしないということ.
  それでも全く問題がないことは判明した.
  術直後にガーゼを当てる直前に,自分は必ず消毒をしていた.
  しなくても良いのは,こちらに来てよくわかった.
  今まで,10個以上の病院で慢性硬膜下血腫のオペはした.
  もちろん,他の手術も助手として入れば年間60とすれば,
  もう1800以上はした計算.
  自分は余分な消毒をしてきたのか? 
  しかし,今は,手術終了時にガーゼを当てるときに消毒をしない.

  要は,手術が終了して,ガーゼをかぶせる時に消毒しない.
  もちろん,今働いている病院はその方法で
  20年間以上行って,感染もない.
  それなら,術直後の消毒は不要ということになる.

  慢性硬膜下血腫の手術ならせいぜい30分ぐらいのもの.
  10時間以上に及ぶものなら,術後の消毒も必要かも.
  しかし新しい病院の方法では,
  縫合が終了したら,そのまま消毒せずガーゼをかぶせた.
  これが,一つ目の驚き.

  落としどころ:慢性硬膜下血腫の手術直後の消毒は
  しなくても感染はしない.

2)Y ガーゼの大きさ
 ドレーンも入れ縫合して終了して,
その後,Yガーゼあるいは切込みガーゼを当てるのはどこもしてる.
ドレーンを挟むためのYガーゼは形は全国共通.
四角に折ったガーゼに真ん中に中央まで割を入れる.
そして少し先を両側をYの字に広げる.

その大きさは,病院によって違う.
規格品は6cm四方のものが滅菌してパッキングされて売っている.
自分が今使っているのは,ガーゼを折って切って,
3cm四方にして,中央に自分で挟みで割をいれている.
それだけ小さくするには理由がある.

2)消毒剤は何ですか?

  以前は,全国がイソジンだった気がする.
  今は,2,3種類ある気がする.
  (1)ピンク色の消毒液:
  (2)
  (3)

3)剃毛範囲は?
  大昔は,丸坊主にしていた.
  慢性硬膜下血腫の手術でである.
  自分が以前いた病院での剃毛範囲は,4cm四方であった.
  新病院では,ほぼ線状で,数ミリの幅,皮切の周囲だけである.
  ドレーンを入れる部分を剃毛というかトリミングしない.
  しかし,剃毛といっても,大昔は,「歯」のついたカミソリで
  ぎりぎりまで髪の毛を文字通り,剃っていた.
  今は,クリッパーというかバリカンでギリギリまで刈り込んで終わり.
  それは同じであったが,範囲が極端に狭い.

  自分が考えた方法:
  術野に長い髪の毛が入ってくるのは皆困る.
  皮切が4cmの線状のものとして,
  ドレーンが前からか後ろからかによるが,
  ドレーンが入らない側は,皮切から1.5cm,
  ドレーン側はチューブの分で2.5 cm程度剃毛.
  その外側は,髪の毛を数mm残して,
      短めにトリミングしておく.
  そうすると髪の毛で意外と早く創部は隠れる.

4) 清潔域のカバーは?,消毒範囲は?
  ドレープは何を使いますか? 
  自分がたどり着いたやり方を記述.

  まずは,3Mの5cm幅のテープで,
  半分ずつはがすことができるものを準備.
  それで剃毛範囲ギリギリのまわりを五角形に張る.
  以前は,四角形にしていたが,
  トリミングをドレーンが入る部分のみ後方に伸ばすので,
  皮切の両端部分もそれにあわせて後方まで
      トリミングしていたが,それは無駄とわかり,
   ホームベースみたいな形のトリミングに変わった.
  その後に,その形にあわせて周囲を半分
  除去できるテープでカバーした.
  その内部を消毒.
  外側にあたる部分のテープの裏ははがさない.
  髪の毛に付着すると
  はがすのが大変になるからである.

  次はドレープ.これは産科用ドレープの上半分を切って,
  それをさらに真ん中で切って,2枚のドレープができるの
  で,それを消毒した上からはれば,
  広さとしては十分である.
  別にドレープを出すと,1枚余分な出費になる.

  これは,前病院でのやり方を五角形にしたところだけが自分の工夫.
  さらに新病院でされていた工夫を追加したい.

  慢性硬膜下血腫の血腫液がチューブを入れるまでに噴出してきたら,
  創部の下に落ちる.そしてテープを貼ってあるだけでは,髪の毛が
  血液,血腫液で汚れる.なかなかそうなるときれいにならない.

  どこにでもおいてあるのが,

4)抗生剤の種類と回数
  これは,外科の手術のガイドラインがあるので,
  最初の投薬は,第一世代のセフェム系.
  皮切の時には開始しているのが肝.
  これは,各種のガイドラインがあるため,特に変わったことはない.
  それでは,術後はどうか?
  大昔は、1週間朝晩やっていたときもあった
  今は,どこの病院でも,慢性硬膜下血腫の場合,大抵は1回のみ.
  皮切がはいるまでに始めるのが正しい.
  
  

5)手術翌日からの消毒は?
  ドレーンを抜去するので,一回テープをはがして創部をみる.
  術後,全く消毒しない病院もある.

6)縫合には何を使うのか?

6-1)ドレーンの固定は,
ステイプラ-,絹糸,ナイロン糸のどれが良いか? 

まず有名なステイプラー,15針のものと35針のものがあるが,
それを材料費に請求できないことが多い.しかも一個が2500円ぐらいから3500円する.それで4cm程度の表皮を5針ぐらい使って廃棄処分する.さらに,翌日ドレーンを抜去した表面にもう一針かける病院がある.
この時は麻酔が効いていないので痛い.
しかも2個目のステイプラーを「あけて」使うことになる.
それだけで5000円以上の損失になる.
どうすれば良いのか?
以前の病院では,ドレーンをいれて,頭皮から7cmなどで1-0絹糸で固定していた.「糸付き針」で機械縫合して,ドレーンを固定して,それを切る.残りの糸の部分を使う.
その後,チューブの下を通して一針1-0絹糸をかけておく.
そして輪っかを作っておく.それをドレーンが抜けてから糸を閉めれば
中の血腫液が刺入部から,排液されることもなく,空気が入ることもない.
そうすれば一個分のステイプラー代金が浮く.
絹糸などは一本20円ぐらいである.針付きでも高がしれている.
それで解決したかと思えば,新しい病院では,そうでもなかった.

要は,新病院は,ドレーンチューブを翌日抜去した後は,
要は手術の翌々日は創部はオープンにするということ.
そして翌日から新病院は,創部を毎日洗髪するとのこと.
「創部を含めて術後2日目からは洗髪する」

それは,抜糸まで消毒はしないが,創部をduoactive ETでカバーする元の病院と
全く違う方針だった.

二日目に創部ごと洗髪すると,絹糸では水を吸収してしまい,
傷の深部が汚染されてしまう.

要は絹糸であらかじめ糸をかける方法は,
今の病院ではだめ.ステイプラーか水分を吸収しない糸でないとダメ.
しかも,ステイプラーは高いし,ドレーン抜去後に新たに一個出すのはもったいない.

そこで,考えた.
新しい方法.
時間は少々かかっても,
「抜糸あるいは抜鉤まで毎日洗髪するなら,創部から水分が
染みこまない素材で縫合しないと.ステイプラーに代わるもので」
ということで,ドレーンチューブは3-0ナイロン糸で固定,
これは機械縫いで,糸の先端だけでチューブの固定は可能.
残りの糸の部分で,チューブが通過している部分の下側を通過させて
糸をかけておく.先端には輪っかを作って,
引っ張れば先が分かれるように
しておけば,
「もう一回ステイプラーを使う」
「洗髪しても縫合部から水が入る危険がなくなる」
の2点の問題が解決.

しかし,皮切自体を何で縫合するかの問題がある.
皮下を丁寧に縫えば,表皮はずれないように寄せるだけ.
しかも,洗髪に耐えれるように.
それに対しては,「4-0-Nylon糸」で確実に層を
合わすようにした.
ナイロン糸は一本が非常に良いものでも1000円しない.
通常の外傷に対して使うものは500円程度.
ということで,

4-0ナイロン1本で機械縫いで創部を縫合.
3-0ナイロン1本でチューブの固定と抜去後の縫合に使用.
合計1000円弱.
それでステイプラー2個分の費用が浮く計算.
しかも糸は材料として請求もできるので問題なし.
それで「洗髪の問題」「ステイプラーの消費量」の問題は解決.

6-2)創部の縫合はどの糸がよいのか?
頭皮表面はやはりステイプラーか?
答え:毎日洗髪するならナイロン糸.

骨膜,側頭筋と筋膜,皮下組織の縫合
これは,今は大半のところが「3-0ーVycril」を使っている.
これは一本が500円で,8本のセットが4000円.
通常は,内部は,最内側の骨膜と側頭筋と筋膜をまとめて縫合する.
そして皮下組織を縫合する.
それはあわせても10縫合以上はなし.
それなら一本のvycrilですむ.
ということで,それは機械縫いになった.

問題は頭皮である.
新病院は,毎日洗髪なので,ステイプラーが一番だが,
「高価」である.
そこで皮下組織もきれいに縫合しておけば,
4-0-ナイロン糸で寄せれば良い.
機械縫いで1本もので縫合することにした.

※ドレーンも3-0ナイロン糸で抜去後に閉めれるように
あらかじめ糸をかけておく.
要は表面は「ナイロン糸」のみが残存するようにした.


7)創部はオープンが良いのかカバーするのが良いのか?
  一般には,創部は綺麗に面があって,創部がきれいに癒合していれば,
水をかけても,48時間後には,水は中にははいらない.
それなら,2日後からは,水で洗っても

8)Burr hole buttonを使うかどうか?
  これは,多くの考え方がある.

11)術後の管理
10-1)創部はwet あるいはdry?
10-2) 術後の抗生剤は?

12) 抜糸の時期は?
   

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