自分のための備忘録: 内視鏡を使った血腫除去のしかた

2017年11月13日の記録.

神経内視鏡の講習を受けてきたので,これは個人的な備忘録.自分自身の未熟程度,道具やスタッフの習熟度の違いなどで,無駄な部分も多いので,「今の私個人のやりかたのまとめ.」
1)脳内血腫除去は硬性鏡だが,

  (1)内視鏡焦点は,1cm前あたりに,あらかじめ合わせておく.
          これには,血腫除去の基本的な考えがあるため.
    後述.オートフォーカスでは無し.

WB(ホワイトバランス)は,白いガーゼなどを見ながらボタンを押せば良い.

  (2)左手に吸引管,右手に内視鏡把持.
  (3)吸引管先端は,内視鏡先端の1cm前に出るように把持.
    ポートの中で長さ調節する.どれぐらい出たら1cmなのかは確認を.
    ヒトにも道具にもよるが,右手で内視鏡,左手で吸引管が良い.
    その時のポイントは,左親指は吸引の強さをコントロールするので,残りの第2,3指をまとめて,3,4本目の指の間に吸引感と内視鏡をはさむ.そうすると吸引管+内視鏡を一体として奥と手前に動かすときに,内視鏡の先端と吸引管のそれぞれの先端の距離というか長さが変わらない.

2,3指が吸引管の上,4本目が下がやりやすい.(非常に大事)
 右手は内視鏡の管の部分を持つのではなく,さらに上のコネクト部を持つ.あまりに内視鏡のシャフトがねじれると,丸いモニター画面の視野の周辺に三日月の形が見える.内視鏡が反っている証拠なので持ち直す.折れると大変.

2)シースあるいはポートの挿入と固定

  透明シースがわかりやすい.
  まずは,脳室穿刺針でタップする.
  血腫を注射器で引いて,ごく少量引けたら止める.
  勢い込んで,この時に大量に10ccのガラスの注射器などで吸引したりすると,脳の位置がずれるのであわてない.1-2 ccで充分.それ以上は引いたらダメ.分からなくなる.
次に,可能なら6mmのシースを入れ替えて,血腫の中に入ったかどうかをさらに確認,6mmのポートでも血腫吸引は可能だが,動かしにくい(後述).さらに,その後,外套9mm, 内筒8mmに変更できれば楽.が普及している.ハッコウ,オリンパス.
入っていっているかの確認の仕方.

透明なシースは,それなりに考えられている.
入れ方は,まずは,内筒,外套を組む.
8 mm の内筒先端には,穴があいていない.比較的鈍な形状をしている.
これで白質を突き破って入っていくには勇気がいるので,確実にルートが確認出来てからが良い.外套も一方は長く,一方は短い構造.これも理由がある(後述)
外套は,ぬらしておく.
内筒先端に内視鏡を入れて,先を内筒先端に当てて,血腫の上限まで,なるべくゆっくりと挿入していく.ゆっくり挿入しているときは,先端に血液のルートが見えたら一番楽.血腫にはいったら,まわりが白い白質の脳から,赤黒い血腫液に変わるのですぐに止める.調子こいて奥まで入れない.これが大事.
次に内筒を抜去,外套を固定.外套は骨表面のまわりに固定用のゴムが広がっているが,大きいので邪魔なので,二回りほどザッセンで切ってまわりを小さくしておく.皮切と穿頭あるいは小開頭は別にまとめる.
その位置で,まずは固定.

内筒をゆっくりと抜去.この時,脳の圧で,血腫が入り込んできているで,内視鏡先端が汚れないように注意.
※手術の時は,内視鏡の先端が汚れないように気をつける.汚れると生食で流して先端を拭いてと作業が止まる.
※細い内筒,外套キットの場合,内筒内に内視鏡は入らない.
 先端を内視鏡で後端からみながら少しずる入れるか?
 知識不足で検討課題.

3)血腫除去の開始.
 血腫吸引の鉄則:日本人が熱いお茶を飲むように,空気と血腫を一緒に吸引して,ズルズルと音がする位置に吸引管を保持して吸引するのが大事.
これは,血腫の上端で血腫を吸引できている証拠なので,常に音がするように吸引する.初めは血腫がどんどん入ってくるので,内筒の上のほうで吸引することもある.無理して,その時も奥へ突っ込まない.常に内視鏡と吸引管の先が一定の距離を保たないといけないので,血腫は手前から吸引の鉄則に従って,上から吸引する.

その場で先端を動かさずに,粘って保持が大事.
突っ込んで内視鏡先端を血腫液で汚さないこと.
血腫除去の吸引管は,2.5mm, 2.7mmが良いとのこと.4mmは下垂体用とのこと.
要は少し細めの吸引管が良い.
皮質下出血,

3)ある程度血腫吸引ができたら
  脳と血腫の境界を脳を吸引せずに血腫のみを吸引する仕方.
  時計回り,逆時計回りに境界の血腫のみを吸引する.
  脳を吸わずに,血腫のみを吸引.
  硬い血腫塊にあたれば,そこへはサージセルを吸引管で押しこんで,
  圧排するようにしておく.それが目印になる.
  硬いところは避けておく.まわりの柔らかいところを吸引.術野の奥にまわったら,吸引できることもある.
   

  おそらく,あまり書いていないが,内筒をじわじわ抜いてくると,皮質下出血でも,比較出血でも必ず外套の半分近くまで血腫液の上澄みがあがってくる.
この時に,吸引管と内視鏡を外筒内に突っ込みすぎずに粘りつつ,血腫液の上澄みを吸うことが大事.そこから外套の少し奥まで吸引していけば,自分の予想では,この時の吸引で目標量の1/3は吸引できていると思う.
4)外套の動かしかた.内視鏡の動かしかた.
  モニター上の上下左右への吸引の拡大法,

まずは,内視鏡のモニター画面をよく見る.自分の内視鏡は,どちらが上になっているのかを確認する.モニター画面の丸い画像の中で,一番外側に黒い▼がどの器械もでる.そこでアダプターをまわして,その▼の矢印が12時の方向にあるようにすれば一番,オリエンテーションは着きやすい.
血腫除去には,12時の方向,3時の方向.6時,9時などと方向を言うことがある.頭を30度ばかり左にターンさせたりとかした状態なら,前額,目のほうを12時に設定したほうがわかりやすい.3次元であわしていくのは疲れる.一番わかりやすい位置決めは,自分が術野にまっすぐ立って,前方方向が12時,右横が3時,自分側が6時,左横が9時である.血腫除去は,開頭の場合でもそうだが,「4分割」して確実に吸引,除去していくのが一番.

12時の方向を吸引するときは,手元を6時の方向に傾ける.
大きな管の中なら,手元も12時に持っていって,12時の方向を吸引でいるが,基本操作は,吸引の先端と反対側に手元を動かす.
「テコの原理」が正しい.この時注意しないと行けないのは,
回転というか動かすときに,吸引菅が奥に入り込まないようにすること.

ある程度血腫を吸引すると,外筒が少しずつ前後左右に動くので,
それで,12時の方向の血腫を取るなら,外筒ごと少し6時の方向に動かすことが大事.

外筒の深さは,深くなりすぎないことが大事.徐々に深くする.

4)止血,
  フットスウィッチを踏む物を使うが,先端のあてかたが,キモ.
まずは,凝固が出来る装置は2mmは先端が絶縁されていない.
その中で,その側面を使って凝固止血する.
真ん中に垂直にあてて,凝固すると,すぐに炭化してしまい,癒着する.
外すとまた出血する.
oozingには,弱い電流でゆっくりと側面をあてる.
奥にいれて,通電,徐々にこちらに引っ張ってくる.
動脈性の場合は,血管を凝固の先端を強い電流で焼く.

2017年12月17日,ここまでまとめていたが,時間が無くて,終わり.
明日,皮質下出血のオペがあるので,見直しているが,
どうも,一回講習会に出たぐらいではラーニングカーブはなかなか上がらないと納得.なんでもそうだが.まあ,講習会は「脳動脈瘤のネックが露出してからのクリップの仕方」のようなものなので,皮切,頭位,固定法,進入方向などは多くの論文をよんで,お勉強しないと,無理であろう.

必要なこと

1)重力を味方にする.
血腫の一番上から下へ血腫の長径がなるようなポジションがいつもとれるかどうか.
しかし,上下に垂直に動かすのは結構大変.肩も肘も疲れる.
20度ぐらい傾いたほうが手勝手が良い感じする.

2)大きな穿頭だけではダメ.小開頭でないとうまくいかないことが多い.
  自分の印象では,穿頭の3番を用いてシースを挿入する穴を大きくすのでは足らない.
  はじめから,小開頭する決意が必要. 自分の今の印象では,直径3cmあれば十二分.
  

3)どうしても,血腫腔に到達できないなら,ナビを使う.
  最初は,後頭部なら仕方が無いが,仰臥位で出来るなら最初は,磁場式ナビを用いて,方向を再確認すること.磁場式ナビも使うなり,とにかく3Dで,確実な方向を当てることが大事.術前のCTだけではダメ.
いざとなれば,開頭血腫除去に変更出来る体制で臨むこと.

まあ,すこしずつ コツをつかんでいこう.
大量の勉強と知識と技術の獲得と,亀の牛歩で前に進む覚悟がないと
高齢化した脳外科医には未来も救いもない.

続く.

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