MRAで,血管直径が3倍になるとは?

普段は,コメントに質問があっても,
自分のメールにコメントが来ていますので,
対応してくださいとでます.

それで直接返事をしていました.
今回,おそらくスマホからのためか送り返せません.

返事を記事に書いておきます.

「素人さん」はどう心配しているかなどが分かったので
一応ここに書いておきます.

質問は,アセトアミノフェンを頭痛で処方されて飲んだ.

その後MRAで「血管径」が3倍になっていた.

それはアセトアミノフェンの「末梢血管を拡張させて解熱させる」効果が

血管に及んだためでしょうか?との質問でした.

1)基本知識として,MRAは,上向きの速度の値を数値化して,
それを白さの程度に数値化して画像にするもの.
よって,上向きに流れていると綺麗に白く出て,枝分かれで下向きになったりすれば,上向きの流れの速度が遅くなり薄くでます.
頭のてっぺんからの静脈は下向きの流れなので,当然,出てこないことになります.
MRAでデコボコに狭く写る血管は,壁が厚くなっていて,流れるところが狭くなっていることを意味します.川の流れだけを写していて,壁の情報はありません.

2)椎骨動脈解離では,壁が足側から裂けて,そこへ血流が流れてきて,頭側も裂けたら,血液がそこを通過するので外側に近い壁がさけて,血圧で壁が薄いところが膨れたら,流れている部分が広くなるので,
MRAで広く写る訳です.壁が避ける部位が,あまりに壁の外側に近いと外に破れてしまい,くも膜下出血になります.壁の避ける場所が内側に近く,内側によってしまい,避けた部位だけに血液が流れると,上に出口が無い状態なら,血管の真腔(もともとの血管腔)が中におされて,血流が途絶えて結果として脳梗塞になります.真腔は流れが無くて,偽腔のみの流れで脳梗塞にならない例も存在します.

3)MRAで血管の直径が3倍に膨れた画像となっていたと言うことは,血管がさけて偽腔(新しく血液が流れていく血管腔)ができて,血液がそこを流れるときに,圧が高く,外側に膨れたということを意味します.避けた部位の外側の壁が薄いから血圧にあわせて風船みたいに膨れたことを意味すると思います.

4)椎骨動脈に関して言えば,真腔,すなわち元々の血管腔が3倍の直径になることは,あり得ません. MRAで見た目が3倍に膨れ上がったと言うことは,血管の壁が裂けて偽腔ができたと考えるのが妥当です.いくら血圧が高くても,内弾性板もあるような正常な血管壁が3倍に膨れることは,よほどの特殊な状況,結合組織の脆弱な疾患のヒトなどでも無い限り考えにくいです.しかし有名なエーラース・ダンロス症候群,マルファン症候群でも,「末梢血管が,アセトアミノフェンで血管直径が3倍まで膨れる」などの診断基準は書いてありません.壁が裂けた可能性を考える方が妥当です.あるいは長期的なら動脈硬化性変化で拡張蛇行して,直径が太くなっていることもあると思いますが,カロナール内服を1日あるいは数日だけして膨れることはあり得ないです.

5)アセトアミノフェンは,有名な薬はカロナールです.カロナールで末梢血管が拡張して熱を放散させるのは,わかります.しかし椎骨動脈は末梢血管ではありません.末梢の血管でも正常動脈が3倍の直径に膨らむことは,報告されていません.見たことも聞いたこともないです.

6) カロナールは,子供にも大人にも老人にも解熱鎮痛剤として世界中で毎日,それこそ驚くほど大量に使用されています.それで脳のMRAで正常血管直径が3倍に膨れるという副作用は,今の今,全く報告されていません.

以上のことから,
1)カロナールを数回飲んで,末梢血管であれ中枢神経系の血管であれ,正常の血管直径が3倍に膨れることがあるなどの報告が一例もない.

2)MRAで正常脳血管が直径3倍に膨れる画像はない.急に膨れてまた次回のMRAでは,正常に戻っているなどの報告は一例もない.
3)脳血管,椎骨動脈はそもそも末梢血管ではない.
などから,質問,疑問自体が,ある意味,大きく現実から離れています.

後頚部,後頭部の頭痛があれば,カロナールを処方されるのは普通の医療です.
その後に,壁が再解離してMRAで直径が3倍に見えた可能性があります.それは,カロナールが原因というよりは,壁の再解離自体が,種々の要因でおきたと考えるのが妥当です.ほかの可能性もあるかもしれませんが,一番心配するのは,再解離です.
血圧の管理が大事です.

一般の素人さんが理解に到達するためには,以上のような知識が必要です.

そもそも論ですが,わたくしのブログの記事は,資料は,朝の医師の集まりの抄読会用の資料が,いつの間にやら,たくさん出来たので,それを病院内の看護師,リハ療法士,放射線技師,検査技師などのために文章をわかりやすくして,院内e-ラーニング用に書き直した物です.

よって,全く医療,医学知識が無くて,専門用語の適切な理解が出来ていない人が読むと,いわゆる「字面」から,自分なりの解釈をしてくるヒトが出てきます.

誤解を誘導してしまうのもどうかと思います. 

また考えます.

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