救急車の取り合いの時代が来た.

「たらいまわし」は過去のお話へ

そういえば,そんな時代もあったなぁ・・・

近辺の病院は,どんどんリニューアル.
そして,市民病院も,日赤も,済生会も,
ろうさい病院も
すべて,変わりました.
なにがどう変わったか?

以前にも書いたが,
救命センターが「最後の砦」と思っていたのが,
大違いだったことに気がついた国,
都道府県,医師会,大学医学部は,
こぞって方向転換しました.

要は,国,厚労省が昔,描いていた構図は,
近くの病院で困難と判断したら,
高次機能の病院へ患者を転送する
という図式.

そうやって,大学にも救命センターを作った.

受診者側は
「近くの小さな病院,医院は全く信用していない」
いざというとき役に立たないと信じている.
となると,

「はじめから大病院,救命センターを受診する.」
救急車もそうする.

ということで,
軽症の独歩患者も大病院の救急部,救命センターに殺到して,
その上に,本来の業務の重症患者が搬送されて来たら,
さらに職員は疲弊するという構図ができあがった.

そこで,ハタッと皆さん,
「この場合は医療側の皆さん」が気がついた.
はじめから,軽症も何もかも「診断まではしてしまう」
ようにシステムを作り替えたら,回るのではないかと.

それで,国をあげて,県立,市立など公立病院,
大学病院でさえ
最初の防波堤型病院」へと
転換を図った.

また「地域支援病院」の資格獲得条件に
「医療圏の救急車の5%以上の台数を取ること」と
いうのも加わった.

とにかく,広い救急スペースで
どんどん初期診断をしていき,
軽症と判断出来たら,
とりあえず入院へ.

その後の方針たてて,
2,3日で近くの病院へ,
すぐに地域連携室,MSWが話をつけてくれる.

そうすれば,近くの小病院も,
「診断は,当院ではなく大病院,専門病院が
つけているのだからなにかあっても,
こちらに責任はない」という立場で
仕事が出来て楽.

患者サイドも,いざとなれば,また
「センター,専門病院が診てくれる」
と考えるので,気が楽.
そこで良くなって帰宅できれば
それにこしたことはない.

大きな背景は,
一つの病院で完結する時代は,すでに終わった」と
医療従事者全員,さらに患者サイド,家族,
親族全員がはっきり自覚したこと.

これは,長年,国が進めてきた医療政策の
一つの果実であろう.

さらに日本中の人々の考えを変えた
大きなハード面の理由がある.

東日本大震災である.この2011年3月11日の大震災は
病院も大被害を受けた.

それで,免震構造の基準を満たしていない病院は
役に立たないと判明.
病院の建物としての機能強化.
とにかく地震対策の基本の基本は,
「病院は,災害時には他の会社,工場が機能が
落ちれば落ちるほど,機能をあげて
稼動しないといけない」
ことが判明したこと.

「平時の1.5倍の入院患者に耐えられるように」
など災害拠点病院は大変な建物の基準が出来た.

これは,非常に「特異な,まれな建物」と
いうことになる.

他の建物が壊れて,インフラも止まって,
普段の何倍も患者が増えた状態でこそ,
普段よりも稼働率を高めるというのは,
通常の産業,思考様式とは真逆の方向性を持つモノ.

ハードもソフトも,
とてつもない余力を持っていないと
ダメである.

奇妙なたとえだが,
150kmの速球の時に3割のヒットを打てるイチローが,
相手が225kmの速球を投げてきたときに,
6割の確率でヒットを打てるように備えておくと
いう感じ.

となると,まずは建物自体は,大きく広くなる.
ところで,毎日,毎日大震災が起きるわけでは無い.
普段は,ありあまるぐらいの広いスペースの確保が大事.

そこで,広い広い救急対応スペースを持った病院,
ヘリポートを持った病院などが
この時期の立て直しで出来てきた.
海岸から1.5km 以上陸地側などの
各種の条件も出来た.

それだけハード面がそろえば,

そういうところでは,次は
ソフトもそろわないと動けない.
広くても,電気配線,ベッド,電カル用PC
などの設置は必須.
特に赤電源(自力発電)も必須.

ということで,
1)立派な,広大な救急対応(本当は災害時対応)の施設を
  持った病院が増えた.

2)軽症が殺到しても,
  どんどんさばけるソフト面の充実もできた.
  医師事務作業補助者など,
  10年前には陰も形もなかった人たちも大量に増えた.
  とにかく「大量のヒトをさばくシステム作りを構築した」

また国策として,
3)救急の評価を「救急車の台数」で評価するように国は,
  大きく舵を取った.
  ウォークインを時間外に何人診ても,
  全くに近く評価を与えなくなった.
  
  「救急車を取る病院が良い病院」という概念の固定化,
   導入,
優遇政策の結実.

一通りの
「病院立て直しラッシュが,来年,再来年にはおさまりそう」

立て直された病院の特徴は,すべての病院が,
広い救急車対応スペース持つ「最初の防波堤型」
である.

現在,すでに起きているのが,
立て直しが済んだ病院同士の
「救急車の取り合い」である.

これは,ある意味,当然の予測された結果である.
広大なスペースで,人員も器械も配置しておいて,
稼動させなければ「赤字の垂れ流し」になるから.

また,リニューアルに向けての準備も
厳しくなりつつある.
来年立て直しが完了する700床の病院は,
すでに
「救急車を断ったら,その医師は,
その理由を文章に書いて上部に提出」
が義務づけさせられたとのこと.
開院すれば,おそらくすぐ満床になるとは思うが.
断らない習慣を強制的に身につける訓練中であろう.

その裏側では,
「それなりに地域の救急を担ってきた,
救急車が月に60台から90台ぐらいの病院」
の,救急車は減少している.
要は,一日に救急車2,3台の病院への
ニーズはなくなっている.
それぐらいなら,
新しく立て直した病院同士で吸収してしまう.

すでに,自分の働いている病院に,
来年からは「救急車対応は辞めます」と
二つのところから,挨拶が来ている.

それらの特徴は
「初代が頑張って病院を作って,
初代は救急を取っていた.
2代目になって,すでに老健施設なども
運営しており,経営的には全く救急対応をしなくても
困らない立場の病院」である.

全く困ることはないところで,
一日2台ぐらいの救急のために
ヒトを配置するのは,大変である.
というか非効率的で,赤字になる.

来年あたりからは
「救急車のとりあい」が
本格化するであろう.

自分のところでも,どうやったら
さらに増やすことが可能か
毎日毎日,頭をひねっている.

「救急車の取り合い」に負けたら,
地域支援病院もなくなる.

そうなると,予算も減る.

いったん負け組に入ると
「老健」「療養型」など「安定型施設」を
もっていない病院単独のところは,
消えてしまうか,
業務体系をかえるしかないであろう.

もう一つは,看護体制の導入.
7対1の看護師体制も,
ナースが集まらず10対1,さらには15対1まで
下げた病院も知っている.
そうなると収益率はさらに下がる.
さらにヒトを雇えなくなる.

自分の考えている「救急車の台数を増加させる秘策」
は,秘策なのでネットではオオヤケにしたら,
皆がすぐにまねるので,
ここでは,書けません.

まあ15(土)に一般当直して,
救急車を次から次へと対応しながら,
来年の戦い方を考えていた.
一応,救急委員会の委員長なので.

 

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