まだ,手術適応の説明が,絶対的適応,相対的適応,
社会的適応などいくつもあると理屈ではわかっていたが,
説明がうまくできなかった時があった.
実際,百にひとつということはある.
はじめから,何をしても助からない状態というのはある.
しかし,なんとかなりませんかと聞かれたらどうするか?
答えは,手術をするときは「1%にかけましょう」
しないときは,「99%無理ですから,患者さまを痛い目にあわすのはやめましょう」
ということになる.
その説明は事実の説明をしている.
しかし,悪用しようと思えば,できる.
手術をしたくてたまらない病院は,1%にかける.
そして,しかばねが,99個並ぶ.一人は助かる.
病院の評判をあげるのは,その一人である.
それが有名人であれば,なおのこと.
したくない病院は,手術しないで死んだ人が100人並ぶ.
脳外科の場合.無理を承知で手術すると,植物状態.
さらには,自発呼吸があることはあるが,
弱く脳死と植物状態の間の人工呼吸器がどうしても外せない状態になることがある.
無理して手術すると,この状態になる人がものすごく多い.
要は,100に一つも意識がもどらない状態を作り上げる.
そうなると1%にかけましょうということは言えない.
100%意識はもどらないけど,100%すぐには死なない状態.
脳外科では,その確率の説明をしないとインフォームドコンセントにはならない.
ある大阪にある手術ばかりする病院の説明は
「1%にかけましょう」が合言葉であったと聞いた.
確かに,手術すれば,意識ももどらず3ヶ月後には死亡するが,
手術しなければ,5日後に死亡する脳出血は多い.
その,1カ月,3日月が受容の期間,有名人ならお見舞いの期間として
貴重なものになる.
まあ,多様な文化の大阪では,手術の適応の説明も勉強させてもらった.