2009年の記事です.
「脳外科の救急担当医に電話です.」として,
電話が来た.
全国チェーンを展開している.
有料老人ホームに入っている
「80代後半の女性が数日前から
食欲不振で,今日から意識が低下.
脳外科でよろしく」と,
施設と契約したクリニックの医師からの電話.
脳外科疾患ではないことは,
電話の途中ですぐにわかったが,
断る理由もないので救急車できてもらった.
その患者さんは点滴途中で元気になった.
違う患者さんではあるが,
同じ内容の電話が同じ医師から,
前日は神経内科の医師にかかっていたことが判明.
先の患者さんは,点滴2本して元気になったらしい.
意識障害という解釈で,神経内科,脳外科に電話してくる.
「人間,最後はみな心不全」みたいである.
状態をみて,診察して紹介状を書いてくるだけ立派である.
前に努めていた三次救急の救命救急センターには,
老健施設の職員が,
「状態が悪くなったらここに連絡するように
契約したクリニックの先生に言われています.」と,
さも当然のごとくに,
食欲不振の高齢者を救急車で連れてきていた.
「ここ」とはすなわち救命救急センターのことである.
救命救急センターの医師は,そのクリニックの医師は全くしらない.
最初のうちは,クリニックの医師の紹介状があったのが,
いつのまにやら,
有料老人ホームの契約した
救命救急センターのように変化していた.
これでは,三次救急施設は,
職員が疲弊してつぶれるであろう.
今の病院は文字通り「入院が必要な患者を診る」ので,
定義によれば,二次救急である.
個人的には,二次救急が一番,
医療従事者にとってやりがいがあるような気がする.
というか,自分自身の感覚である.
決して一般論ではないです.
地域医療,高度医療などそれぞれに
面白みも,醍醐味もあると思う.
いやな思いも辛いこともそれぞれにあると思う.
二次救急は「これは,ここにはない器械がないと無理」
「これは,こうすれば良くなる」などがわかる.
「一般的な二次救急+自分の専門分野」ができる病院が一番
職員の離職率が低い気がする.
ようは,充実感が適度に味わえる.
まあ,車でいえば,家族全員も乗れて,
自分ひとりで運転するときも楽しめて.
みたいな感じ.
あまりにひとつの目的に特化すると,トータルの満足度が
下がる気がする.
三次救急で,瀕死の状態を見続けるのも,
激務で高度医療をし続けるのも,
プライマリーケアで地域の老人ばかりと話をし続けるのも,
どちらも,偏りすぎの気がする.
簡単にいえば,
「行ったり来たりできる」可能性があるのが良い.
今の20歳前の人たちを見た後,90歳の高齢者をみると
「同じ人間なのだろうか?」と思うことがある.
その逆も同じで,田舎の道を歩いていて,
高齢者の人達をみた次の日に
大都会に行って,
若い人をみると異星人をみたような感覚になる.
救急患者をみながら,つらつらと考えてみた.