日本の多くの病院は,戦後に建てられた.
当たり前だが,建物自体は,平成になって部屋の大きさなどの基準が
変わり,人間的な環境になった.
昔の6人部屋,4人部屋はなくなりつつある.
まあ,「ホテル並みのサービス」ということになれば,
旅館の大部屋みたいな,あるいは江戸時代のはたご屋の相部屋みたいなものは
なくなる.
それは建物の話.
問題は,初代が開業して,法人組織にして,約20から30年間経過した病院が
多い.中には,子どもが医師にならずに,初代限りで閉める病院もある.
しかし,多くの病院が今は,2代目が院長になって引き継いでいる.
それらは,初代が大きくした病院をさらに大きくしようとしている.
あるいは専門に特化させようとしたり,いろいろ.
最近,気が付いた.
病院ができた時は,当たり前だが,院長初め,メインの医師,ナース,
事務員,全員が若い.それが20-30年経過して,定年が65歳などでやめて
創業者だけが,その年齢を超えて燃えて維持しようとする.
そこで,クエスチョン.
開業した時は,ベンチャー企業みたいなもの.
皆が声が聞こえるところで,燃えて朝昼晩と働き,軌道に乗せた.
黒字にもなった.近所での評判も良くなった.
そして病院ができて30年.
徐々に成長産業,ベンチャー企業から,成熟産業,地域の優良企業へと
変わっていく.
そうなると職員の数もどんどん増えていく.
そこへ入ってくるのが,「縁故採用」であろう.
うちの娘を入れてくれなどは,院長,部長レベルの友人などから
事務系などは入ってくるであろう.
さらに,医師も,ほかを定年,あるいはリストラされた知人なども
入り込んでくる.
成長部門,看板部門ではないところに,徐々にその手の職員が増えてくる.
腰かけ,あるいは第二の人生の骨休めなどの目的で職員が入ってくる.
燃えて成長するのではなく,「食いっぱぐれのないところにもぐりこむ」
という目的で入り込んで来る人は当然,仕事はしない.
毎日,雑談と時間つぶし.
大企業病が徐々にはびこる.
同族会社が徐々にいびつな形で,トンネル会社を作ってみたり,
衰退する形は似たようなものであろう.
その間にも,建物としての病院は劣化するので,
多くの公の病院も建て替え,その時には移転などで広い場所へ
などが,次から次へと起きる.
やる気のある職員はそちらに移っていく.
そして,高齢化した職員たちが,昔の看板を背負いつつ
細々と古くなった建物で古い道具で,近所の人を診療するようになるであろう.
自分の病院をみて,いまは,初代の最後の華やぎ,
秀吉の最後の茶会のような時期かもしれないと思いながら,
「病院の一生」というのに思いを巡らしてしまった.