変わった患者群 大阪編,その3か4

大阪の変わった患者さん

1)あるおばあさん
  小脳梗塞で入院.院内紹介されて診察に行く.
  「どんな具合ですか?」
  「あんたなんか嫌いや」
  「えっ?」 
  意味不明・・・
  
  面とむかって,3秒も話をしない人に
  「嫌い」と怒る人は初めてみた.
  調べていくと,一人暮らしらしい.
  ケースワーカーが自宅に行くと,本名と通販の郵便物の名前が
  違っていたらしい.
  人のカードを使っての生活??
  あるいは,旧姓のまま?? おばあさんが??
  ほとんど口もきかず,転院していったと思う.

2)金の切れ目が縁の切れ目
 軽症の小脳出血のおじさん,半年は大阪で,半年は高知県で作業員.
 妻が見舞いに毎日くる.
 だいぶ良くなって,あと1週間で自宅に退院できますねと説明した.
 2-3日して,本人が「あと1か月入院が必要」と説明をこちらから
 受けたと主張する.
 意味不明だが,療養病棟に移動した.
 それから,妻という女性が来なくなった.
 いつでも家に退院できる状態.

 その女性が「財産のことなど話をしても,
    話がトンチンカンで噛み合わない」
 と相談に来た.
 そんな病態ではない.
 少しして本人が二日間外泊したいという
 どうしてですか?
 「友達にお金を借りてくる」
 「貸してくれる友人がいるのですか?」
 「・・・・」
 最後にわかったこと,および勉強になったこと.
 「内縁の妻とは,同居したり夫婦としての生活の実態が5年以上あること」
 で妻と同様の資格を得て,財産の分与などの権利が与えられるとのこと.
 ケースワーカーが本人に最後に質問,
 「それでその女性はどうなった?」
 「おらんなった」
 「金の切れ目が縁の切れ目か・・・」
 という話.
 まだまだ社会生活が未熟な自分は「内縁の妻」と言う立場が社会的に
 どのようなものなのか初めて知った症例であった.

3)誠意をみせろとすごむ患者さん
ほとんど毎日,内科外来などでは,誰かのどなり声が聞こえていた.
ある時,点滴を毎日しにくる中年の男性が
200ccの点滴をするのを,同じ内容の点滴500ccをされたらしい.
それから毎日,「そのおかげで眠れなくなった.どうしてくれる.」
外来で怒鳴りあげている.「体調が悪うなってしもうた」
「こんな病院は危なくてこれん」
「睡眠薬がほしい」
「誠意をみせてほしい」
その時,初めて「誠意」とは「お金」のことと教えてもらった.
それを「お金」と直接いうと「恐喝」になるので,
言質を与えないため,「誠意といえばわかるだろう」というとのこと.
後々,本などにもそのようなことが書いてあったので,
「あの時の人は,教科書どおりのことをしていた」と納得した.
毎日毎日,ごくろうさまであった.

4)誰にもお金をわたすなと主張するおじいさん
頭部顔面外傷で運ばれてきた,貧相なおじいさん.
妻と娘はすでに違うところに行ってしまっているらしい.
その人が入院してしばらくして,近くの銀行の支店長から電話.
妻がその人のお金を引きに来ている.
「誰が来ても口座から金をひかしたらいかん」と以前から言われていた.
本人が入院していると聞いていたので,電話しているとのこと.
この場合の「誰」は,普通に考えたら,全くの赤の他人がきて,
その人の金を引くことなどは想定しづらい.
要は「誰」とは親族や妻のことであろう.
自宅に,外泊できるようになって,ケースワーカーと婦長さんが自宅に
一緒にいったら,家が,やさがしというかあらされていたらしい.
トイレの壁の向こうを破ると,壺があって,三百万円ぐらいがはいっていたらしい.
他のところに置いてあったものはなくなっていたらしい.
「その金があったら,お世話になった婦長さんにあげようと思っていたのに」
とその場で発言したとのこと.
風体は,貧相そのもので,ガラクタの中で生活していたような家であったらしいが,
その言った通りの場所には,現金があったとのこと.
それを狙ってと言うかなんというか妻と娘が取りに来ていたということらしい.

  突然,多くの大阪の時の患者さんを思い出した.
それは,最近の当直で「ある病気の薬を,30年以上前から飲んでいることを,
配偶者にかくしていた患者さん」が運ばれてきたので,
「謎の人生を送っている人」=「大阪で診た,おおくの謎の人生の人たち」
に結びついて思い出した.

医学の勉強というよりは社会見学という感じであった.

 
  

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする