「走ることについて語るときに僕の語ること」
森村春樹 2007年10月15日初版 文藝春秋
これは,非常にすばらしい.
この当時,すでに,おそらくノーベル賞に最も近い日本人作家
と言われていたと思うが,
これだけ,心情を,具体的に直接的に表現できている文章は
感動させられる.
作家になるには,「才能」とはっきり自分で書いている.
さらに「集中力」
次は,「持続力」
この人は,頑丈な身体に生んでくれた母親にも感謝している.
マラソンそのもの,長時間走ることそのものへの思索,
具体的な訓練.
大昔に,「ノルウェーの森」を読んで以来だったので,
久しぶりに,この人の本をさらに読んでみようと,
「1Q84」を読んでみた.
二日間で読み切ったが,目が疲れて大変なことになったが.
まあ,時代背景は,それこそ1984年頃なので,
携帯電話も無ければ,コンピューターもない.
さらには,カーナビもない.
まだ,すべてが,「アナログ」の時代.
懐かしい,昭和の終わりの息吹が感じられる.
山梨の謎のカルト集団など,
しかし,普遍性というものがある.
驚いたことには,月が一つの世界でも
月が二つのパラレルワールドでも,「暗殺者」は「暗殺者」であること.
どういうプロットを作ったのか?
理科系の論文なら,不要なデータの説明の文章はすてる.
途中の福助頭の調査員のことなど,全体の流れの中では,
完全に不必要.しかし,詳しく書いておけば,
その人が殺されるときに「プロ」はある意味,あっさりしている
ことが強調されるのであろう.
自分としては,「文化系の小説」よりは,
「具体的なプロのお話」のほうが好みとわかったというところ.