自分は,救急をとりあえずまとめている.
問題点の抽出と対策を常にしていないと.
そのためには,いわゆる中当直で,
院内急変に対応するのでは,仕事にならない.
院内の急変も一つのテーマだが,それはいつでもできる.
昼間も急変するし,急変した状態は,元がどの病気でも
共通しているから.
すなわち,「呼吸と循環が不安定」ということ.
それ以外は,あまり関係ない.
ということで,外の当直をするときに,
1)どんな患者,疾患が多いか.
2)明け方,土日の休日に来る患者の傾向
など,統計には,なっていないが,
「職員が困る」状況を抽出している.
土曜日の日当直で,13時から日曜の朝9時まで働いて,
一日で分かったことは,
1)群発頭痛は,やはり夜間の発症,シーズンがある.
アルコールで増悪する.
ということ.
以前に易興奮性のため,別の患者さんが,
「問題患者リスト」のほうに入っていた.
よくよく調べると,群発頭痛であった.
昼間はその患者は頭痛がないため,受診しない.
他の科の医師が当直の時,
「夜中の,2,3時に来ずに昼間に来るように」
と問題患者のリストに名前が入ってしまった.
これは,医療者側に専門的な知識があれば解決する問題.
2)施設からの電話は,相変わらず,
「週末」になったから,なんとかしてほしいの電話が多い.
日曜日の朝6時前にかかってきた電話
「90歳代の施設入所中の男性,何日も前から,赤い下血が
続いているが,診てくれるか?」とのこと.
「何日も前」「赤い下血」とキーワードが並ぶ.
なんとかなると,高をくくっていた?のがいつまでも続くので,
日曜日の明け方に,「日曜日も一日,そんな状態をみるのは,
いやであるから,どこかに頼もう.」と思ったのであろう.
申し送りをうけて,土曜日に面倒みた職員の気持ちはよくわかる.
MARUNAGE の精神は,日本に強く根付いた.
一応,「脳外科医で良かったら,全力で診させてもらう」と
返答すると,電話は切れた.
3)朝の4時には,「爪が(完全に)剥がれたが診てくれるか」と電話があった.
後々のことなどがあり,脳外科医が診るのはどうかと思うと返事をした.
夜中にも,一か月前に他院でペースメーカーを入れた人が,
血圧が高く,夜に眠れないので,受診してよいかと問い合わせがあった.
カルテをみても,不眠のことは一回記載があったが,
高血圧のことはどこにも書いていないし,投薬もされていない.
しかも,ペースメーカーを入れたのは,心臓の専門病院で
救急も受け入れている.
脳外科の自分が診るのが,その人のためになるか?
それだけ,多くの人に愛されている病院なのか,
あるいは,しもべのように,いつでもこき使っても
痛痒に感じない病院なのか?
敷居が低いのは,良くわかる.
自分の働いている病院は,「おおやけ」の税金でできた病院でなく,
救命救急センターでもないので,無理にすべての患者に対応する
大義名分がない.そこまで,する義務がない.
4)興味深い 2症例.
2例とも,別件だが,交通事故で自損事故,
両者ともぶつかる何キロか先から意識がない.
空き家にぶつけたり,他の家のシャッターにぶつけたり.
共通は,ぶつけた直後から意識が清明ではっきりしていること.
逆行性健忘の症状とは全く違う.
個人情報になるので,詳しくはかけないが,
原因は特定できないが,一例は「てんかん発作?」
もう一例は「消化管出血?による一時的な意識低下?」
以前も,大阪で働いていた時,一時的に意識が落ちた人が,
交通事故を起こした.
貧血がある.詳しく調べると「胃癌」であった.
意識が落ちれば,なんでも脳外科にくるが,
交通事故は,今までも
「低血糖発作」になって,逆走した人もいたし,
視床出血で,ガードレールにぶつかった人もいた.
しかし,今回は,ぶつかるずっと先から意識がなく,
その後は,「清明」で普通に会話ができるところが特徴である.
脳MRIも正常である.採血も驚くようなデータはない.
5)朝8時前には,
以前,当直時間帯に診た整形外科からでた痛み止めが効かないので,
今の当直医を出せとの電話.
まあ,日曜日の朝に,一か月も前の夜に来たことで
苦情を訴える時点で,常識とは異なる.
3日分の鎮痛剤と近くの病院への紹介状が書いてあった.
病名は「痛風」であった.
夜中の「応急処置」のみ受けて,その後に紹介状をもらった
近医にも受診していない.
医療側の問題点は,ほぼゼロであろう.
それで,一か月後の日曜日の朝に初めてクレームの電話.
8時前なら,平日でも電話はかけてこれる時間である.
6)さらに8時過ぎには,何日か前に治療を受けていた人が,
だんだん悪くなるので,日曜日に受診してよいかと
電話.他県から来たいような.
週末にしか動けないわけでもないような.
日曜日の朝になんとかしようとする心理機転は,
施設の人たちの,「週末に急変するのがイヤ」と同じ理屈.
自分の感想.
人間は,希望を持つ生き物とわかる.
「なんの根拠もない希望を,時間が許す限り持つ生き物」
今日より,明日,明日より明後日と良いことが起きるに違いない.
それは,困れば,何らかの助けが常にあることが前提である.
医療とすれば,平日はその考えで,家族,患者は動いている.
「何日か前から」なども,共通の言葉,
そして,日曜日の朝には,「今日は,通常業務では無い.
何もかもの体制が整っていない」と突然,判然とする.
そこで,「明け方の依頼」,「クレームの電話」
「日曜日だが診てくれるか」の希望となる.
ほぼ,全員が「何日か前から」と言っている.
要は,平日は様子をみていたということ.
平日のいつでも,あるいは土曜日の午前でも
電話してきたら,なんとかなっていたものを,
わざわざ日曜日まで待って,朝から急いで電話をかけてくる.
良くなるかもしれないと思う気持ちは,
確かに正しいことが多い.
おなかが痛くても,翌日には
ケロリと治っていることも多い.
それは,元が「健康で丈夫な時の話」である.
痛風,継続する新鮮な下血,運動領にある脳腫瘍などでは,
様子をみるということは,「病態を悪化するにまかせる」ということが
わからないと,おかしなことになる.
人間の心の動きに先回りした,救急体制が敷ければ,
医療側も楽,もちろん患者,家族も楽.
土日は,救急体制しかないこと.
土曜日の昼から,恐怖心が増してきて,
日曜日の朝が心配のピークになるので,
その旨,患者,施設の職員などに,
注意喚起を促す,情報提供が大事であろう.
一日当直して,これだけ問題点と対策が
わかれば,上等である.
土曜日,日曜日の時間外に来る人に,
そのような説明書を渡したら,少しは
皆,早く来て,早く良くなるかも.
少なくとも,その人たちは,
もう一度,同じ過ちは犯さないであろう.
土日に発症した人には,渡す必要はない.
もう,すこし,検討して具体的に実行してみよう.