信じられないくらいの過剰な要求
先日、リハビリで紹介した先の病院を退院した患者さん。
内服薬も全くなし。どうするか?
近くのかかりつけとして、ある病院を紹介したら、
そこはだめで当院を希望。
自分の外来は崩壊してなくなったので、
それでは何かあれば連絡をしてもらうことにしましょうと
リハビリ病院の先生に電話で話をした。
どうなったか?
息子が怒ってきた。
「定期的に外来フォローができないのは問題」
「急変したとき、その医者がいなかったら、
どう責任を取るのか?」とのこと。
薬もいらないし、急変しそうにもないので、
何かあったらと、こちらは100歩譲って話をしている。
息子さんの希望では、私が24時間、
年中病院にいることを前提として話をしている。
薬もいらない人が定期的に通院???
ローソンは24時間開いているが、
同じ店員が24時間、365日そこで働いているわけではない。
ローソンに店員がいない時間があってはいけないとは思う。
それとある部分は同じ希望。
「24時間、なにかの急変のために病院に医師が必要」
なおかつ
「もとの主治医で事情が100%わかっている医師がそこにいることが当然」と思っている。
それはローソンになじみの店員がいて、
自分が入っていった瞬間に、自分の買いたいものをそろえてくれる、
そしてそれは、ほかのローソン、
ほかの店員ではできないサービスを提供してくれる」
ことを希望している。
その息子さん自身が
24時間そのように働いているとは到底思わない。
しかし父親を診療した医師はそのように働くべきである。
と心底思っているから怒ってくるのである。
医師とはそのように働くものだと頭から思い込んでいる。
今週、3家族が同じようなことを発言した。
一生懸命みて、良くして、
次へ紹介できるようになるまでこちらが頑張れば頑張るほど、
患者、家族は離れない。
「あそこは薬をくれるだけですので」などと
かかりつけ医のことをいう。
それがかかりつけ医ですよといいたい。
毎回毎回MRIなど撮る必要はない。
落ち着いたとはそういう意味である。
要するに
「やればやるほど自分の受け持ちの患者が増えて、
良くなっても自分から離れない患者が増える」となると、
どうなるか?
自分の外来のように朝から始めて、
昼ごはんも食べれず、夕方6時ごろに終わって、
それから病棟、ICU回って、指示を書いて、
何家族かに説明して、その日にきた紹介患者の返事を書いて、
書類を書いたら、終わるのが翌日の朝2時から4時ごろ。
翌日は朝から手術。という毎日が続く。
外来が破綻して、まず最初の50名以上の外来患者を、
ほかの近医に紹介したら、
ある元気な患者さんは、
受付で「俺はここを捨てられた」と
大きな声で怒っていた。
その患者さんは、
はじめから薬だけもらいに来ていたので、
毎回「変わりない、カラオケも言っている」と症状も全くない。
救命救急センター付属の脳外科医が時間外180時間以上働きながら、
診察する理由がないのが本当のところで、
こちらのボランティア精神からであった。
それがもう無理ですといったら、そのような反応を示す。
ここでは、もう、働けない・・・
もたない・・・
あまりに過剰なサービスを提供しすぎである。
いったい誰の方針なのか?
「一歩譲れば二歩踏み込む」とはこういうことか?
どうして、
はじめから「当院にはかかりつけ医機能はありません。
フォローアップは、近医でしてもらう方針の病院です。」と
言ってくれなかったのか?
「かかりつけ医を持ちましょう」と勧めると、
「ここが近いので、ここがかかりつけです。」
あるいは、
「一月に一回ならここにこれますので、
大丈夫です。」と反応する。
はじめから前提条件が違う。
これでは、無理です。
そもそも
交通機関として路面電車、JR在来線、
飛行機しかないところに
新幹線を作ったようなものである。
使い分けがその地域の人にはできない。
路面電車に乗って20分かかるところを、
新幹線なら1分で着く。
しかも,同じ料金でである.
それならそれに乗って何が悪い?と質問されている気分である。
自分の目的地に早く走る路面電車としか
認識していない人にどのように説明できるのか?
今まで新幹線を利用したことのない地域の人々に。
要は、そのような使い分けの文化がない。
ということになる。過渡期なのか?
21世紀と19世紀の混在。
どちらの希望も聞かないといけない医師。
無理でしょう。
その後の変化は、
新幹線の乗務員をやめて、
在来線の職員になる人が増えるというもの。
それが、おおやけの救命救急センターをやめて、
わたくし立の手ごろな病院に
医師が移動していく理由のひとつ。
それをおおやけの人たちは医療崩壊と呼んでいる。
作ったときから説明不足でスタートをしたら、
結果はあきらかである。
ドイツの格言
「かけ間違ったはしごを早く登れば、
早く間違ったゴールに着く」