当直してわかる,現状

昨日の当直は,ある意味多くの検討課題というか,わかったことがあった.
1)車で15分ぐらいのところに大きな病院がある.そこは第三次救急の
  要は認可された救命救急センター.
  一時の軽症ウォークインの殺到で重症患者が診られない問題から,
 時間外の軽症は3000円とりますとなった.さらにそれが5000円まであがった.
 生保の人からもとりますとなった.
  それに合わせて大学病院の救急も軽症は一万円となった.
 それから,2-3年経過したと思う.
  
 小学生の子供さんが頭が痛いと母親が連れてきた.
 聞いてみると,「今は痛くない」とのこと.
 「3年前から立ちくらみがしたりする」と母親が説明.
 時間は夜の22時前.
 非常に元気そうに日に焼けた女の子「・・・・・」
 よくある,「朝の朝礼で校長が長話をして,立って聞いているとフワーッと倒れる」
というパターンのような. 
  夜中に,脳MRI撮っても,おそらく何の解決にもならないが・・・
 と思って「どうして日曜の夜のこの時間に連れてきたのか?」と聞くと,
「○赤に行ったら,5000円とるといわれたのでこちらに来た」とのこと.

 tilt up testなり,自律神経の状態を調べたほうが良い.
というか,大きくなれば,自然に症状は消えそう.
思春期で,バランスの悪い時もあるのが普通.
「明日,神経内科受診して,順を追って調べてもらえば良いと思います.
夜中に,何か調べて,解決するようなお話とは違う」
金色に髪をそめたお母さんは「明日は私が病院へ行かないといけない.
午後なら来られるかも」とのこと.

  わかったこと・
  1)このような症例が20人も来たら,そして順番にすべて昼と同じ診療をしたら,
    医師はつぶれる.翌日まで働いたら,代わりが来てくれるわけではない.
  2)5000円は三次救急病院の軽症患者受診の抑制力にはなっている.
  3)親の都合で夜しか来られない子供もいるのは事実.

2)救急車
  日曜の夜は戦力が救急としては,もっとも落ちているとき,
  3台来たが,どうも,全部他で断られたような.
  患者さんの住所を見ると,大きな病院の住所とほとんど同じ.
  情報本部もそこに頼むと,一台別のが入ったところ.
  それで当院に.有名どころは同じ状況.

  自分の働いているところは
「ぜんぶとはいわないが,おこぼれを拾いながら救急車台数も,急患も
数を増やしている.」ということになる.
総合病院と専門病院の違いはあるが,

特に困るのが,「顔面外傷」と「頭部外傷」の区別がつかないで救急搬送されてくること.
顔面多発外傷および骨折は,脳外科が治療できるわけではない.
特に,眼球の外傷は,脳外科に依頼されても対処は出来ない.

それと薬物中毒などによる意識障害も脳外科に救急の情報センターから依頼が多い.
情報センターは9名が救急車から電話を受けて,病院の割り振りをしている.
その9名は,今他の担当者がどこの病院に救急車を割り当てたかはわからない.
ということで,2台が1分以内に依頼されることもある.
その担当者がどれだけの医学知識があるのか,あるいは個人的な思い込みがあるのか
わからないが,
「意識障害は脳外科」と思っている担当者がいる.
「溺水,中毒」の意識障害を「脳外科」に依頼してきている.
それは,脳外科の担当分野ではない.と断っている.
脳外科の教科書に,溺水,中毒はどこを探しても載ってない.
専門医の試験にも,項目として含まれていない.

救急車を朝の18時から翌日3時までに3台とったが,4台目の依頼は,
薬物を摂取して,傾眠状態との依頼であった.
一睡もせずに働いていて,朝の6時前にその依頼が来て,それは断った.
こちらも傾眠なんですとは言わなかった.

3)時間外MRI

 少しでも寝ようとしたら,朝6時前に外来に80歳ぐらいの女性が朝起きたら,
左手がしびれて,動きにくいとのことで息子さんに連れられてきた.

そのわりに普通に左手は動かしている.
MRI撮って異常なし.

胃薬がなくなって,薬局で買って飲んだが,それから悪いという.
どんな胃薬かと聞くと,当院からの内服が切れていたので買ったよう.
それをまとめて「胃薬」と思っていたような.
内容は降圧剤2剤,胃潰瘍の薬,高脂血症の薬.
それで,血圧も高かったと判明.

他の80台女性も,うとうとして,起きたら,左足がくねくねとして,動きにくかった.
おそらく,正座した後のような状態であろう.来院時はまったく正常と本人も言う.
MRIは正常.「10年前からふらふらする.ここで一度MRIを撮ってみたかった」とのこと.
日曜の夜中から月曜にかけて日が変わるころ.

ほかにも急に頭痛がするとタクシーで来た88歳男性.MRI撮って帰宅.

共通するのは,全員が一人暮らし.
  さぞ,不安にさいなまれて,皆生活しているのだろうと思った.

日曜の夜などは,同じ症状が出ても不安度は高い.
すぐに息子,娘に連絡して,病院へ.
一種のイベントであろう.家族の会話もできるし,当面の脳の状態もわかるし.

こちらが,耐えて働き続ければ良いだけの話.
問題は,その状態は続かないという事実.

だから,「土日のみ常勤」などの医師も都会では出て来てもおかしくはない.

一日の当直でこれだけ,世の中のことが分かるとは思わなかった.
月曜は,そのまま昼まで働いて,昼過ぎに帰宅して爆睡させてもらった.

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