医師不足は,今後も拡大する.
その理由は,いくつもある.
最大の理由は
1)医師なら何でも頑張ってやる
ということをしなくなる.
「当直はする.しかし主治医にはならない.
土日は,休みをもらう.外来と健診に力をいれる」
と言う条件で働く医師達が出てきた.
そうなると,主治医にもなって土日も働くのが,
医師あるいは医療の担い手とおもっている受益者,
すなわち患者側は,従来の医療が受けられない.
そのかわりに
「当直はしない.主治医にはなる.外来はしない」
と言う医師がいるとする.
さらに,
「土日のみ連続で働く,平日は出勤せず他の事をする」
という医師がいるとする.
そうなると,
今まで通りの,
「当直はする.主治医にもなる.外来もする.
土日も,患者の回診にでてくる」という
1名分の医師の仕事を上記の
3名あるいは4名でカバーすることになる.
新しいカタチの労働体系が認められる方向になっている.
そうなると「医師免許をもった労働者は,
従来の医療を維持しようと思えば3倍近く必要になる.」
それはそれで,文句は言うつもりはない.
問題は「新しい,部分的に働く医師に対しても,
従来のフルタイムの医師と同じ給料を病院は出すつもり」
とわかるとどうなるか???
今までの「働きづめの医師達の反応はどうなるでしょうか?」
それなら,自分も当直は無いという条件で,
あるいは「主治医はしません」と言い出すに決まっている.
日本全国の病院で,徐々に徐々に
このような事態は進んでいる.
ドイツみたいに,手術中でも時間が来たら次に出勤してきた
医師に手術を交替してもらい帰宅する
ということも普通になる時代がくる.
その分ドイツの医師の給料は
日本人医師と比べて破格に安い.
上記の「三人で今までの一人分」あるいは「三分の一ドクター」
達の給料は,おそらく,1/3近くまで下がるような気がする.
あるいは,仕事は三分の一で,給料は半分に減っても,
自分のやりたいことが出来れば,
幸せな医師は一杯いるような気がする.
今後,10年で間違いなくこのような時代がくる.
「医師不足はどんどん進む」
とにかく,出産のみ管理するとか,
外来だけの小児科医などは,
普通に出てくると思う.
2)初期研修医制度で,ふるい落とされる.
初期研修医は,一応
「土日は働いてはいけない」
「死亡診断書は書いてはいけない」
など,優遇なのか縛りなのか
わからない文言がある.
人の死についていけないことがわかる人間もでてくる.
医局制度で医局に属するときは,
そのような人のためにも働き口としての関連病院を
どこも持っていた.
田舎の,あるいは海辺の病院など.
しかし,新研修医制度は「一人事業主」になってしまった.
そうなると「自分には無理」と思えば,
自分で「田舎の」「海辺の」「人里離れた」病院を
探さないといけない.
しかも医局からの裏情報がその病院,
診療所に伝わることもない.
従って受け入れる病院は
「バリバリの現役医師」を期待してしまう.
それでは,ますますその医師は壊れる.
一般社会人には一定の比率で,
ドロップアウトする人が出てくる.
医師にもそれが適用されたことになる.
従来よりも,高率にドロップアウトして
行っているとわかる.
「一人前の医師」になる確率が下がった.
サケの卵5000個の内,孵化して海に下って,さらに
もとの川までさかのぼってくるのは2匹程度とされている.
それで,一定数になる.
増やしたければ,孵化率,ある程度大きくなるまでの比率を
あげるしか無い.
それと同じで,「ある程度,耐えられるまで育てる」
システムを放棄して「好きなところへ行って働ける」
自由を与えた分,落ちこぼれて行っても
助けるシステムは働かない.
まあ,「一人前になる医師の率」がさがり,
理由その1)のように,部分的な仕事しかしない医師が増える
となると,従来よりきびしい医療サービスに対する要求を
満たすには,「医学部卒業生」を
今の「3倍」まで増やさないと無理であろう.
そして,パートの医師が大量に増える.
それらを組み合わせて,病院全体の業務が
成り立つ時代が来るであろう.
そもそも,ナースはすでにそのようになっている.
一般会社も「非正規職員」を多く雇って事業を続けている.
医師だけが,従来の宗教的なギルド,ユニオンみたいに,
滅私奉公で,狂ったように働く集団にあり続けるはずが無い.