2025年にむけて,救急車出動回数は増える一方.
それは,救急車が「重病,重症」を救急搬送
するという目的から,
高齢者たちが,どこの病院を受診したらわからないから,
また病院までの「足,交通手段」がないから
救急車を呼ぶという状態に変わっていっているから.
要は,「情報センターに問い合わせて,無料で,
軽症,中等度の病態をとわず,病院へ連れて行ってあげる
手段」として,救急車が使われるから.
そうなると,
「軽症,中等症」レベルが大変増えてくる.
問題は,
「高齢者なので,他の合併症を多く持っていること」
国の医療制度の度重なる変化で,破産する病院も出てきている.
そうなると,「銀行管理の病院」も増えている.
1990年頃,自分が働いていた大阪の「福祉法人」の病院にも,
最上階の一室に「住友銀行の銀行員」が
常駐して,毎日,お金の計算していた.
収益が上がれば,利子だけでなく,元本も
少し払ってください,など.
まあ,救急車を年間3000台とっても,45億の借金を返すのは,
なかなかであった.332床の病院であったが.
時代が変わっている.
一つは,1)救急車が増加していること.
その内容は,高齢者の中等度までの病態が増えたこと.
もう一つは,
2)救急車,急変を断らずに取る病院に「お金を出す」
様に,国が誘導していること.
看護度が足らないと,ICUの許可を取り消すなど
典型的.
ついて行かれない病院が,自分の住む県でも出てきた.
破産した病院の
立て直しの方針は,単純明快で,過去も今も同じ.
1)銀行管理とする.銀行員が常駐する.
2)救急車,急変をどんどん取る.
3)無駄なことは,すべてやめる.
たとえば,芸術品,アート,植物,癒やしの環境など
収益をあげないものをすべて現金化して,
最初の返済額を下げる.
急変,急病の時期の人ばかりなので,
絵画などを落ち着いてみるような患者さんはいない.
4)利益を税金として納めなくて良い「社会福祉法人」
に変更する.
などであろう.
まあ,それで大変になるのは,
常勤医,ナースだけでなく,
当直医師である.
自分の県で,そのような状態になった病院には,
「大学病院全体として応援する」という大方針で,
外科,脳外科,救急部と大勢が連日,
当直に手伝いに行っている.
こちらが,母校の医局に当直を頼んだときも,
「先生の病院はつぶれる心配が無いので,
当直派遣の順位は,ものすごく低いです.」と
はっきり,年下の医局長に言われた.
まあ,
自分の病院への直接的な影響は,
「何でも救急車を取る病院」が,患者さんを入院させておいて,
「3日目に麻痺が強くなっているので,よろしく」
と脳梗塞患者が運ばれてきたり,
脳塞栓と肺塞栓と合併例を,診断仕切れなかったりと,
専門疾患でない患者さんの状態が
「どこの素人さん,一般人,家族がみても」これは重症
というまで,抱えておいて,
気管挿管してこちらに送ってきたりする.
10人中9人は適当にやっても,治っていく.
それは,「軽症患者が増えたから」である.
しかし,そうでない人を見分ける診療力がないのに,
抱えると,後を引き継いでリカバーさせる専門病院が
救いきれない状態がでてくる.
それだけ状態が悪いと,脳に関して言えば,10分の遅れで
植物状態か,意識がもどるかという話になる.
外来も止めて,他の手術を止めて,
その人にかかり切りになる.
それなりに,
頑張って治療はしてくれたのは事実なので,
決して「前院が,中途半端な治療をしたから」
などは,口が裂けても言ってはいけない.
これは,医学部の学生時代から学ぶこと.
最初は,盲腸,子宮外妊娠など
診断がつくこと自体がまれな疾患は,たくさんある.
ぼろぼろに悪くなれば,どんな三流,へぼ医師でも
確定診断は付けられる.
それでも,こちらで手術などして改善しないと
こちらが,「悪者扱い」されてしまう.
まあ,キャッチコピーとして,
「救急車を断らない病院」というのは,
あたかも,「どんな疾患でも対応できる」と
錯覚,ミスリードを,救急隊,一般人,マスコミ
に与えてしまう.
それが,その地域を代表する高度救命救急センターなどなら
話もわかるが,「破産する一般病院」が
それだけ各科の医師,医療従事者を集めることは
初めから無理なので,期待したらダメ.
まあ,自分の経験から,
最初の半年はなんとか個人のアドレナリンが出続けて,
続けられる.
その後,3年目まではそういうライフスタイルになれて,
なんとかできる.
自分が全く,飲み会には出席せず,空いた時間には,
どこでもすぐ寝るような生活をしていたように.
しかし,その代わりに,他の仕事はしない.
救急が来るまでは,休憩時間をもらうなど,
殺伐とした人間味のない生活が現実のものとなる.
疲れても,予備電源で動くターミネーターみたいな印象.
そして,そのような病院は「もう,そろそろいいですか」
と借金の返済も大分進んでいるので,
3年から5年の間に,医療制度もまた変わるので,
収束を迎える.
3年ぐらいで,「話題になって」
その後,1,2年でピークアウトであろう.
まあ,勉強にはなる.
早く借金を返して,通常業務になることを
祈っている.