崩壊は続くよどこまでも その2 2007年の記事

崩壊は瞬間ではなく連続

大学:この場合は、大学の医局の意味:
のお膝元で病院群の話.
とにかく,ナンバー1、部長、科長は辞めない.
年齢と責任で動きようがないし、
辞めても、今度は高齢で行くところがない。

辞めていくのは,ナンバー2,3である.
それも自分で,都会,特に東京の有名病院にアプライしている.
それで,決まってから,教授に連絡,来月からそこに行きます.
と言うことで,あっさり,辞職.

自分の今の赴任地は僻地であり,
ここでは2年前から昨年に急激にそれが起きた.

田舎には居たくない.旧来の医局制度なら,辺地に2-3年行けば,
次は手術の多い病院にいける約束があり,我慢もしていた。

次の医師がきてくれるから。
しかし医局制度の崩壊で、その後任の医師が来ないと判明すると,
ずっとそこにいるか,自分で新しい職場を探して出て行くしかない.

辺地なので,単身赴任が大半である.
自然に辞めていく医師が出てくる.
後はもちろん来ない.
これが,医療崩壊の最初の段階.

これは僻地ほど,あっさりとはっきりと答えが出て,
2年前には大量の専門医が自分のいる県から消えた.

そして次は,地方中核都市,県にその影響が及ぶ.
全く面白くない病院,昔からの関係、
しがらみで人事で無理に派遣され続けている病院が,
いまだにたくさんある.古い伝統のある医局ほど多い.

新専門医クラスの医師は,
そこに派遣されたら,数年は動けないことが分かる.
後釜がいないのは,中核都市であろうが同じである.
今まで苦労して資格も取って,
これからと言う時に,その他大勢の病院に赴任.

そこで給料がものすごく良いとか,診断機器が最新のものでもあれば,
モチベーションも維持できるが,
そうでなければ,
「実力をつけるのは
今のうちしかない.
ここに3年いても5年いても同じこと」とすぐにわかる.

そして,サブスペシャリティを求めて,
都会の病院を,ひっそりと目指す努力を開始する.
それは医局に相談しても無理な話であり,
東京,大阪の有名病院を志願する.
昔なら,アプリケーションを受け取った病院も,
「お宅の○○医師という人が,こちらで働きたいと来ているが,
採用しても,そちらに迷惑にはなりませんか?」と問い合わせがあったものである.
今は違う.そのまま採用してしまう.
競争の時代なので,良い医者が転がり込んできたら,
もうけものであり,遠慮もしない.

従って,30台後半の医師が,
全く知らぬ前にびっくりするほど遠方に移動して,
後で周囲がびっくりとなる.
これは,モラルの崩壊であろう.

残された人のことを考えていたらなかなか踏み切れない.
自分が進歩から取り残されるとの焦りと事実から,
そのような行動にでる.

それは責められるべき行為ではないが,
「秘密裏」に動くことに,違和感を感じる.
これも2004年に研修医がどこを選んでも良いという制度にした以上,
30歳代,40歳代の医師も,
同様に「どこを選んでも良い」と解釈される制度の導入であったと言うことである.

話は元に戻るが,自分の出身大学の県では,
この秋に,医師が3名いた病院で2名に減るところが3箇所.
すでに,4名,3名が2名に減少しているところは2箇所.
2名が1名に減って,救急も取れなくなった病院が1ヶ所.
3名が1名に減って,救命救急の看板を降ろさないといけないような
病院が1箇所あるような.

減少した若手医師の行動は,大きく二つに分かれる.

(1)都会の有名病院で実力をつける.そして帰ってくるつもり.
(2)しんどいのはもういいので,楽にしたい.
   現在専門医を取って
   フリーターのような立場の医師が2名でている.
   沖縄の病院にアプリケーションを出した後,病院をやめて
   返事待ちの医師もいるとのこと.

   中には,「朝8時半から夕方5時半まで働くのは,もういいです.」
   と社会人としての最低限の時間が働けない医師もいるとの話
   を聞いて,行くところまで行ったという印象である.
   彼らはストレスでつぶれた後の状態であろう.

   従来なら,そのような状態になった医師でも働けるような
   「関連病院」を医局は持っていた.
   病気になる医師も一定の確率で出てくるので,
   そのような医師にも職場を確保するための
   関連病院をもっていたが,現在の状況では,そのような医師の
   働き場所はない.

   医局制度の完全崩壊,医師個人のモラルの崩壊
   今後,さらに「流れの医師」が増えそう.
   病院管理者,院長も,来てくれる医師ならだれでも歓迎とは
   今後はならないような気がする.

   崩壊の連鎖は止まらない.
   

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