軽井沢での脳ドック学会の参加報告,おまけに2年前のもつけた.

学会に参加した職員は,
報告書提出が規則です.

出張費用などのことで,報告書が必須.

今回の報告書は,下記の通りです.
少し一般的な柔らかい文章になおしています.

参加目的:この数年は脳ドック受診の目的が,高齢者の「認知症かどうか」と
中年以下の「脳は健康か,脳動脈瘤は大丈夫か」の二つに分かれる.

学会の内容も,日本医大の森田明夫教授が会長であるためか,
「未破裂脳動脈瘤」に関してのシンポジウム,演題が沢山あった.
それと認知症関連の話題の二極化という印象.
他は画像診断の進歩,危険因子の抽出と思われた.

1)認知症に関しては,多くの治験が集積されていると思われた.
驚いたことは6月15日に発足するという「脳神経外科認知症学会」のお話.
従来のtreatable dementiaを治すだけでなく,
幾つかの試みがなされるような話.
また認知症学会の専門医,指導医の話は印象的であった.
現在,国は認知症治療センターを全国に550カ所以上作る予定である.
大学病院,総合病院には順番にセンター化したものが出来ている.
今後は個人レベルでも作れるようにとのことで,
そこで働ける条件に「認知症学会専門医」,
あるいはそれに同等の臨床能力が条件になるとのこと.

これはtPA治療するためには,脳卒中学会の講習をうけないといけないと
いうことから脳卒中学会が大きな力を得たことに似ている.
他の血漿中アミノ酸濃度での認知症の予知の講演もあったが,よく分からなかった.
またJ-ADNI研究というものが日本でも行われており,
アルツハイマー病は,軽度認知障害よりも,さらにその前のプレクリニカルAD期,
要は病理変化陽性だが症状が出ていない時期に加療を開始するのが理想的と判明し,
疾患修飾療法を検討しているとの発表があった.

2)画像処理技術の進歩による新しい撮り方:
順天堂大学の教授の講演で,Synthetic MRIという撮り方があり
5-7分で撮影できて,撮影時間自体は短いが,
撮影が終わってからT1,T2, proton, FLAIR, IR,
double IRなど設定を変えたら,その画像が得られるというもの.
病変にあわせて一番わかりやすい画像を出せる.
そこからミエリンマップなどその場でどんどん作っていけると
いうものがあった.

日本医大からの4D-CTA,4D-MRAという撮り方の講演があった.
4D-CTAは,50mlの造影剤を5ml/sで注入する10秒間に
5000枚のCTを撮影する.
従来のmultidetectorで64列が回転するなどとは原理的にも異なり,
大きな面自体で撮影するというもので造影剤の流れが分かる.
それを後で画像処理して必要なものを選ぶというもの.
MRIも10秒に4000枚撮るというものが提示された.
通常の撮り方とは異次元のものであり,
脳ドックに普及することは無いとは思うが「教育講演」であり,勉強になった.

3)危険因子に関しては,微小脳出血にはCKDが関与している.
脳動脈瘤破裂患者には虫歯菌陽性率が非常に高い
(産生物質が血小板抑制と血管床のコラーゲンを溶解する)との発表があった.

頚動脈プラークと白質病変は合わせて脳主幹動脈狭窄のない場合の
脳梗塞発症の危険因子との発表あり.

4)脳ドックのオプションとして,ある項目を加えた方が良いと言う発表が
幾つかあった.
非痙攣性てんかん重積状態(NCSE)の頻度は痙攣性の3倍あるので,
運転士などには脳波も加えた方が良いとのこと.

またVSRADは普及しつつあるが,海馬血流は早期のAD,iNPH,
一部の血管性認知症で早期に下がることが判明しているので,
追加はどうか.

ストレスチェックシートを使ってストレスの種類と
脳ドック所見を比較検討したものもあった.

HDS-R,MMSE,時計描写テスト,
立方体透視図模写を追加してみた報告など,

脳ドック自体が,「正常の患者群の基礎データの集積群」のように
扱われている状況もでてきている.

5)未破裂脳動脈瘤に関しては,UCAS Japan,  SUAVe,
ISUIA, JR-NETなどの概略の説明があり,
厳重にフォローアップしていれば,破裂しそうな瘤に対して
効率的な介入ができるとの状況になりつつあるが,
問題は「観察の間隔」に対する証拠がいまだにないことが課題とのこと.

総じて,目の前の受診者に,どのような健康的な生活を送ればよいかなどの
説明方法などはなくなっている.
受診者,患者から得られる,人類の疾患,変性を解き明かして,
そのエビデンスを集めて全体を改善させることが目標になっている.
その目標にむけて,今どのような研究がなされていて,
どの程度判明しているかの報告という状況になっていると感じた.
医学の進歩と,個人の生活,
人生をつなげる「説明方法」が今後は課題になりそうに思われた.

と言う報告書を出した.

ところで,去年は事情があっていけなかったが,
一昨年の報告書も,上げておく.
平成26年6月6-7日下関の
第23回脳ドック学会の報告書は

下記の通り.

「昨年からの流れであるが,
「認知症検査」が非常に詳しく項目に追加されたこと.
「脳ドックガイドライン2014」ができあがったが,
その内容で大きく変わっているのが,
Ipadで簡単な高次機能テストが無料で配布されること.
初期の脳ドックは「自分が健康かどうかの確認」であったが,
今は「認知症ではない」に大きく舵を切っている.
また,認知症の薬の説明が結構あった.
脳外科よりは神経内科が主役のような印象.
認知症に関しても,多くの治験が集積されていると思われた.

1)Intrinsic functional actinというか,
脳内活動は安静時に95%活動していて,
問題を解決していても,それほど活動量は上がらないとのこと.
様々なconnectionがあり,dorsomedial prefrontal などは,
社会的理解の時に活性化されて,medial temporal subsystemは,
身につまされることを考えているとき活性化されるなど.
このdorsomedial 
Network(DMN)から
アミロイドプラックが蓄積しだすとのこと.
また可塑性があり,
何歳になってもconnecitonは訓練で増加するとのこと.

また,髄液中の認知症のマーカーも幾つかでており,
MCI(軽度認知障害)は,3年後には49%が認知症になるが,
その早期のマーカーもほぼ同定,測定が出来るようになっている.
家族性アルツハイマー病での経年変化の研究も米国では,
15年前から続けており,
結果はアミロイドは15年前から蓄積開始,
タウ蛋白は10年前からなどかなり解明されていると思われた.

2)未破裂脳動脈瘤は,日本のUCAS Japan, 
欧米の前向き研究を合わせたPHASESからの発表が主で,
高齢になれば他の病気の率も上がるので,
未破裂脳動脈瘤は,年月が経てば破裂しにくくなることなどからも,
疾患の中での重要性が低下してくるなど,
自然歴の統計は大分,出そろった感じがした.

「出来たて」が一番破裂しやすいとのこと.

3)特別講演は,非常にユニークであった.
米国で15年間外科臨床をしてきた聖路加病院医師山内英子医師の講演で,
米国では女優のアンジェリーナ・ジョリーは
乳癌,卵巣癌になりやすいBRCA1, 2遺伝子を持ち,
母親も乳癌で死亡,叔母が卵巣癌で死亡.
自分が癌になる確率87%と言われ,
乳房予防切除再建術を行ったことで有名になった.
米国では14人に一人が乳癌になるとされており,
遺伝子検査後,上記の手術は保険診療として通っている.
統計に基づいて医療費削減になるためであるが,
それを聖路加病院で導入して遺伝子検査で25万円,
2011年7月から実費でその手術を行っている.

4P 
predictive,
personalized,
preemptive(先制),
participatory(参加の機会を与える)という医療に移行しているとのこと. 
米国と日本の医療保険事情の違いで,
米国は一次予防,proactive(病気になる前に手を打つ), 自己責任,

日本は二次予防,
reactive(早期発見早期治療,病気にならないと保険が効かない),
他者依存と対比された.
肥満に対する胃切除のオペも保険に通っているなど,
全体的な医療費削減には容赦ない印象.

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